可愛い子のお祝いに - 2/3

その後、金剛から面白おかしく過去の轟家の微笑ましいエピソードをたっぷりと聞いた平は、空き部屋に布団を敷いて眠っていた。
「ん……んぅ」
なにか、どこかに、違和感が……?
突然意識が浮上した平は、ゆっくりと瞼を開ける。ナツメ球の橙色の光が、目に眩しい。
どうしてか、やけに温かい。それに布団も膨らんで……?
「……ッ!」
ヌルついた触感。足が動かない!
平は自由な両手を使って一気に布団を捲り上げる。
バサ、と盛大な音を立てて布団が捲れたその先には。
「な……あっ?」
自分の愚息が、尊敬する男の口の中に根元まで飲み込まれている光景があった。
「な、んで」
俺のちんぽ、しゃぶってるんですか。
疑問が喉の奥でつっかえて出て来ない。
言葉に詰まっている間にも、男の口の中で分厚い舌が平の愚息を舐め上げる。
「っうあ! あぅ……」
堪らず平が声を上げると、飲み込んでいた唇が根元から離れて行き……男は愚息を舐めしゃぶるのを止めた。
「ン、悪いな平。我慢、出来なくてよ……」
口元を拭いながら顔を逸らし、申し訳なさそうにする金剛の姿は、平が今日まで築き上げて来た番長像を揺るがすのに十分な破壊力があった。
「俺、いや……俺達は、お前の事が好き……なんだ」
前からこういう事がしたくて、でも無理強いをしたいワケじゃ……
最後の方は声が小さすぎて平の耳には届かなかった。
言葉が進むたびしどろもどろになって行く彼の姿に、平はこの人には人一倍不器用な所があるのを思い出した。
きっと、人並みの恋愛観を持っていないからせっかちになってしまうだけだ。
「番長」
それよりも好きだと言われた嬉しさの方が平の中では勝っていた。
同性愛者だった事にはまだ驚いているが、嫌悪感は無い。
「悪い。こんなの……漢じゃないよな」
苦しさを吐き出す金剛に、平は起き上がってその大きな背中に手を回す。
「いいや、漢かどうかなんて関係無いッス! 番長、好きなものは好きでいいんです!」
「平……」
「俺も、番長の事が好きッス。その、こんなことまでは……考えた事はないッス。けど」
回した手を恐る恐る解き、すっかりしょげている彼と向き合う。
「嫌いになったりしないッス、だって俺は……どうしようもないぐらい番長が好きなんッスよ」
「……ああ」
「それに、俺にとっては番長は漢の中の漢ッス!」
少なくとも、彼自身の好き嫌いで尊敬の念が揺らぐ事は無い。一度憧れたあの日から、ずっと……
ずっと、平は轟金剛という漢に魅せられ、ああなりたいと頭上の星として掲げ続けて来たのだから。
「だから、番長が……その、ぉ、俺を抱きたかったら、あの……ええと」
これから行われることを想像しては、顔が青くなったり赤くなったりする平の肩を金剛が叩く。
「違う、逆だ」
そうじゃないと言わんばかりに首を横に振られ、平は首を傾げた。
「逆?」
「俺が抱かれる」
「…………へっ?」
手で軽く押されるままに倒された平の身体の上に、金剛が素早く跨る。
そのまま身体が近付いて来る……と思いきや、彼は唐突に部屋の扉の方を向いた。
「親父」
「えっ……!?」
言葉に驚いて平が扉の方を向くと、眠っていたはずの剛天が扉を開けて入ってきているではないか。
「好い漢ぶりだな、順」
「えっ、は、はい……?」
訳も判らず返事を返した平に満足そうに笑うと、彼は次いで己の息子と対峙した。
「金剛、何をしておる」
「何って……見りゃあ分かるだろ」
あっけらかんに答える金剛に、剛天は呆れた様子で息を吐く。
「轟商事社員心得!」
「『社内恋愛、停職に処す』か……」
剛天は頷いた。
「もう一度聞くぞ、金剛。何をしておる」
問われた男は暫し考え込むと、真っ直ぐに剛天の目を見て答えた。
「……平に礼をしなきゃなと思ってよ。俺も楽しかったし、親父も楽しかった。なら、“二人分”の礼をするってのが筋だろ?」
そう言うと金剛は平の萎えた愚息を掴むと、ゆっくりと扱き始める。
「あっ!? ば、番長……!」
「ほう、お前もやっと人付き合いの何たるかを知った様だな」
実の息子が同僚の逸物を扱き上げているという異様な光景であるはずなのに、顔色一つ変えず近付いてくる剛天に平はますます混乱する。
「金剛、私の分まで礼をしようとするのは嬉しいがな……順には直々に労わせてもらおう」
「分かった。元々そういう話だったもんな」
「あのー、ハナシってのは……一体……?」
平が尋ねても二人はただ、淫靡に笑うだけだった。