浴場にて。

「温泉?」
「ああ。たまには良いだろう?」
 唐突なヘンリックの提案で、ガスコインは彼と二人で温泉へ浸かりに行くことになった。
「なんでまた急に言いだしたんだよ」
 脱衣場で、コインロッカーの扉を開けながらガスコインが言う。
 ヘンリックは少し困ったような親友は眼中に無いのか、いそいそと服を脱いでいた。
 これはダメそうだ。ガスコインは早々と諦め、服を脱ぐ事に集中した。
 何しろ山中にある温泉で、肌寒いからと何枚か着重ねているのだ。さっさと脱がなければ、ヘンリックに置いて行かれるであろう予想はすぐにつく。
 上着を脱ぎ、ベストを外し、中に着ているシャツと肌着をまとめて脱ぐ。
 隣の親友はもう全て脱いでしまって、歳の割には立派な……ノコギリ鉈が見える。
「何を見ているんだ、馬鹿者」
 小声でそんな事を言われる。悪い、と飛んでくる拳に応対しながら、ガスコインはズボンを一気に摺り下げた。
「……」
 無遠慮にパンチを飛ばして来ていた右腕が止まる。ガスコインが不思議に思って親友の方を見ると、彼はあんぐりと口を開けていた。
 ……その視線は自分の逸物に集まっていた。ガン見されている、と言っても過言ではない。
「お前……」
 震える声でヘンリックが言葉を紡ぐ。
「前見た時より、大きくなってないか?」
「バッ……そんなワケ無いだろ。これ以上成長したって困るぜ」
 一応聞くが、これは『変形前』なんだよな? と真面目な顔で問いかけてくる親友を軽く小突き、ガスコインは温泉に浸かろうと扉を開ける。
「待った、ガスコイン」
 不意に呼び止められる。振り向くと、タオルが腰の辺りに巻かれた。
「その見苦しい物は仕舞って行け。いいな?」
 ……ふと周りを見渡すと、自分から一斉に視線が逸らされる。
「おう……」
 ガスコインはタオルでとにかく自分の武器を隠し、風呂場への第一歩を踏み出した。

 


絶対小さいってことはない。魂を賭けてもいい。

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