私は猫を不可思議な生き物だと思って生きてきた。
ある者は可愛らしいと言い、またある者は不法侵入者だと言って忌み嫌う。
今までの私は、そういう意味では猫についてあまり何とも思っていなかった。小さく、丸くなる事が出来る、人間の隣人。
その程度にしか思っていなかった。だが撤回しよう。
猫は……猫という生き物は……凄く、巨大な生き物だ。
「ガスコイン……」
黄色の衣服を着た男が、弱々しく猫に呼び掛ける。
猫はあくびを一つしたが、男の膝の上から離れようとはしない。
「参ったな」
男はそう呟くと、膝の上に乗る……いや、膝の上からはみ出している毛玉に手を入れる。
男の名はヘンリック。誰もが持て余す猫を半ば押し付けられるようにして引き取り、世話をしている飼い主だ。
誰もが持て余す、と言っても精々行儀が悪いぐらいだろう。
そうヘンリックは思っていたのだが……いざ対面してみると、その考えは砂糖をたっぷり使ったケーキより甘い物だと思い知らされた。
彼は真っ白で、ふわふわの毛並みを持ち、目の辺りに何故か包帯を巻いていて、黒い帽子を被っていて――大きかった。
ともかく、他の猫と比べて巨大だった。肥えているのではなく、ただただ……とてもとても……デカい。
他の猫の三回りぐらいはある、大きな猫がそこに鎮座していた。
断ることも出来たのだが、大きい事以外は特に問題も無かったため、ヘンリックはつい引き取ってしまった。
何せモフモフなのだ。風呂もそこまで嫌がらないし、入れた後に乾けば毛は更にモフモフ。モフモフの魅力に敗北したのだから、引き取る他無かったのだ。多分。
「なあ、ガスコイン。頼むから膝から退いてくれ」
ヘンリックは先程から猫に辛抱強く語りかけているのだが、一方の猫は精々にゃあ、と鳴き声を返すだけで一向に動こうとしない。
暖炉の前でのんびりと本を読んでいたのがいけないのかも知れないが、サイドテーブルにある紅茶が切れ、淹れて来ようとしたらコレなのだ。
理不尽にも程がある。仕方ないと本を読み進めていたのだが、少し前に読み終わってしまった。
腕で退かしても構わない……と思いかけるが、ヘンリックはその考えをすぐに消し去った。
こうなるともう、梃子でも簡単には動かせない事は過去の経験から理解している。ではどうするか。
「全く、お前は……」
頭を撫でてやり、何かの気まぐれに退いてくれる事を祈る。
まあ、大抵の場合は居座るだけなのだが。
「みゃう」
ガスコインは控え目に鳴くと、満足そうに撫でられていた。
特段何もない、冬のある一日。
ガスコイン神父が猫になったらクソデカふわふわキャットの誕生です。
