私とお前は全員皆殺しにした。お前の自由のために。
過去に当てられたどんな外道の役よりも、私の方が愛情深いという自負がある。愛の為せる業だ、単なる邪悪ではない。少なくとも私はそう思っている。
私は息を潜め、彼の言葉を待った。最愛のペット……まあ、そうか。
殆ど狂気的な物言いだったが、赤い瞳はまだ私を映していた。お前が金糸雀であれと望むならそれでもいい。私が望むのはお前だけだ。
だのにお前は私に何と言ったんだ、アスタリオン?
ああ、私に永遠を与えてはお前は二度と自由になれないだろうに! お前の過去を皆殺した邪悪へ報いてはいけない!
ああ、ああ、それでも――お前は私が欲しいのか。お前の自由に必要だと言うのか!
私は報いを受け入れた。不死の恩寵を、肉体の支配を、そして……精神の死を。
齧られ、命の奔流を吸い上げられて喪う度に、筆舌に尽くし難い快楽を体験した。
「最後の一杯」を味わった時も相当はしたなく乱れたのに、あの圧倒的なものを思い出すだけでもう一度欲しくなって堪らなくなる。
ヴァンパイアには貪欲しか残らないと言うが、その貪欲の原点を見た。
昼も夜もなく互いを貪る妄想で頭が一杯になりそうだ。
シャーの修練場で野営地を開いた夜、お前に毎回強請り過ぎだと怒られた時……幼生騒ぎの前までは、誰かの肌をここまで繰り返し求める事は無かった、と打ち明けた時のお前の顔を思い出す。
信じられなかっただろうな、アスタリオン。私もだ。
ともかく、ヴァリス・イルメナイトは死んだ。
愛するヴァンパイアの過去を殺し、彼があれだけ望んだ自由を捧げる事も出来ずに、彼に噛まれて死んだ。死すべき悪、私利私欲の塊だった。
お前の事だから、いつかこのメモを盗み読む時が来るかもしれない。
バードのネタ帳を読むなんて酷い奴だ。だが、私は笑って許してしまうだろう。
だから書いておく。
私の全てであり伴侶、服従する主人にして仕える王、我が祖であるアスタリオンよ。
知っての通り、お前の配偶者は欲深い。精々気を付けろ。
愛している。
