FF14の蒼天時代に別名義で書いたシャリベル×ヒルディブランドの小話です。
蒼天秘話も出る前の話なので諸々あやふやで間違っていますし、そもそも接点のない二人を無理やりくっ付けてます。ご注意ください。
ピカピカの使用人用の服を着て、張り切っているハイランダーの男が一人。
その目の前で、頭を抱えて溜息をついているエレゼンの男が一人。
「とにかく……アタシの使用人ってコトにしてアンタに掛かる諸々の疑いを晴らしたから、そこそこには働いて頂戴ネ」
エレゼンの男がそう言って微笑む。何かの悟りを開いているかのようだったが、ハイランダーの男の方はそんな事は露知らず、元気よく返事をした。
「このヒルディブランド、必ずやご主人様のお役に立ってみせますぞ~!」
それを見て、エレゼンの男はまた溜息を吐いた。
イシュガルドは夜の冷え込みが激しい。周りは皆そう言うが、本当に一番冷え込むのは朝だとシャリベルは考えていた。
ベッドから抜け出す時のあの寒さと来たら、いきなり防寒具も無しに雪原へ飛び込んでしまったかのようなのに、賛同する者は少ない。
それもそうだ、蒼天騎士ともなれば使用人の一人や二人は居るのが当たり前なのだから、起きる時には使用人が暖炉に火を入れていてくれるか、使用人を呼んで部屋が暖かくなるまで待てばいいのだ。
シャリベルは使用人を使った事がない訳では無かったが、長い間側に置く事も、自室に入れる事も無かった。前職が人の恨みを買う仕事であった事から、リスクを避けている内にそれが習慣付いてしまったのだ。
とはいえ、シャリベルはそう困ってはいなかった。蒼天騎士になった今でも、彼は自分の身の回りの事は自分で整理出来ているからだ。
今日も凍え死にそうな程の冷気を浴びながら身支度をして外に出ると、雪が積もっている以外は何ら変わりの無い普段通りの道へ出た。
いや……明らかに違う点もあるのだが、シャリベルは目を逸らし続けている。
登庁する彼の通り道に積もった雪に、誰かが頭から突き刺さっていて、出ている足は美しい間隔を持って開いている、というような酷い現状をシャリベルは現実として認めたくなかった。
そのまま通り過ぎれば良かったものの、融通の効かない元部下がこっちへ向かって来ているのが見えた時、自分で対処した方が早いだろうと思ってしまったのだ。
手のひらに炎を集中させて雪を溶かし、男を引っ張り上げて抜こうとしていると、その石頭が走り寄って来た。
「シャリベル卿、一体何を!?」
「ナニって、人命救助ヨ。……チッ、石床まで突き刺さって……」
「見た所ヒューランのようですがこれは異邦人でしょう、大丈夫なんですか?」
「大丈夫なワケないデショ? 他に見つかって面倒にならない内にッ、さっさと回収してズラかるワ…………キール、手伝いなサイ」
「で、ですが」
キールは躊躇したが、シャリベルに鬼の形相で睨まれると、彼は怯えながらも手伝った。
結局その日は仮病で休み、キールをこき使って引き抜いた男の身分証明と手当てに尽くした。
結局雪に埋まっていた男は、書類上では男はシャリベルに今日から仕える使用人であり、屋敷へ向かっている最中に転んでしまい、頭を打ち付けて気絶していた所を主人であるシャリベルが手当てをした。という事になったのだった。
男が目を覚ましたのは日が完全に沈んだ後で、シャリベルは何故拾ってしまったのかと後悔している最中だった。
起きた彼にボロボロになっていた服の代わりに使用人が着るような服を渡し、自己紹介と今までの状況を説明して、やっと話は冒頭に戻る。
「ご主人サマ、なんてそんな格式張った呼び方じゃなくていいワ。そう……シャリベル様、辺りが怪しまれなくて良いと思うワ」
様々な事を諦めながらも、シャリベルは努めて優しく言った。
「なるほど、つまり……ベルちゃんと呼べば良いのですな」
「ナニがどうなったらそうなるのヨォ!」
シャリベルはテーブルに突っ伏してしまった。突っ込みが追い付かないとは、恐らく今のような状況で使うのだろう。
「では、シャリちゃんと呼べば……」
「ああ……もうウザったァイ……!好きに呼びなサァイ……」
シャリベルはとうとう全てを諦めながら、この風変わりな使用人を側に置くことにした。
ここまで暢気な人間が居るとは思っていなかったが、数日も使っているとシャリベルはヒルディブランドへ愛着……のような気持ちを抱いていた。
確かに失敗の方が多いが、ヒルディブランドという男には、どこか許せてしまえる程の愛嬌もある気がする。シャリベルはそう感じていた。
ある日の朝、シャリベルが目覚めると大きな足音が迫って来た。
「ベルちゃん殿!朝ですぞ!」
勢い良く扉が開けられて、あの暢気な使用人が飛び出てくる。
「……起きたワ、今日の朝食は?」
「ナイツブレッドとサラダと、スープが一品、飲み物はイシュガルドティーですぞ」
「そう、ところでヒルディ、アンタ朝食は……」
「ベルちゃん殿と一緒に食べますぞ?」
「……そう」
食卓へ連れて行かれながら、シャリベルはこれまでの事をぼんやりと思い出す。
ヒルディブランドが交渉術で部外秘の中の部外秘である四大名家の騎士団の食事メニューを持ち出して来た日。
初めて二人で買い物に行った日、意外とヒルディに教養があると知った日でもある。
一人では寂しいだろう、とヒルディが一緒に食事を摂ろうと言い出した日。
ヒルディが勝手に教皇庁へ立ち入ろうとして大騒ぎになった日。
彼に振り回されるように過ごす内に、あの朝の寒さも、今では眠気覚ましに丁度いい冷たさだと思えるようになった。
「今日の緊急召集会議は、一体何なのでしょうな?」
「何か重大な事らしいのは分かったけど、それ以上の事は分からなかったワ」
自分の横に並んで歩きながら心配そうに見るヒルディの頭を撫でて、すぐ帰って来れるから、大人しく待ってて頂戴と、シャリベルは子供をあやすように言った。
何処をどう歩いて辿り着いたのか覚えていないが、ここは自分の屋敷だ。頭が痛い。耳鳴りもする。王の僕。王の騎士。己を棄てよ。全てはトールダンの為に。
「ベルちゃん殿?顔色が悪いですぞ?」
あれは、使用人だ。可愛がっている、可愛がっていた?
異邦人だ。異端者かも、知れない。己の役目を果たせ、騎士よ。
「アンタ、どうやってアタシの屋敷に入り込んだノォ?悪い子ネェ…」
違う! 自分から拾った。
何のために? 王の為でないのなら棄てよ。王の騎士、己を棄てよ。
「ベルちゃん」
痛い。頭が割れるようだ。自分の事や、大事な事が囁き声に食い潰されて行く。忘れたくない……何を?
「ヒルディ」
囁き声が煩い。王の声。そんな物はどうでもいい、ヒルディブランドが不安そうな顔を、して、いる。
「無理せず、少し休んだ方がいいですぞ」
そうかも知れない。眠れば囁き声も聞こえない。
「…ええ」
寝室へ向かおうと顔の向きを変えた所で、シャリベルの意識は途絶えた。
ベッドの上で眠ったシャリベルは、とても不思議な夢を見た。
囁き声が酷い中、ヒルディブランドが現れて耳栓をくれる夢。
「ちょっと、こんなの着けたらアンタの声まで聞こえなくなるじゃナイ」
シャリベルは言ったが、ヒルディブランドは「ベルちゃんの地獄耳なら、大事な事は耳栓越しでも聞き逃さないはずですぞ」と、どこから出て来るのか分からないが自信たっぷりにそう言っていた。
夢を見たシャリベルが目覚めると、すぐ隣でヒルディブランドが眠っていて彼は大いに驚いた。
そして、決して無能ではない使用人はオムリク卿という助けを呼んだのだが……
「貴様が危篤だと言うから飛んで来たと言うのに、何だ!この……この……!常日頃そういう趣味があるのではないかと……思ってはいたが!」
「違うわヨォ!」
アタシは昨日ぶっ倒れてそんな元気無かったノ!と言いたいのをグッと抑えて言い争っていると、隣で寝ていた使用人が寝返りを打つ。
「……ベルちゃん、の……は大きい……ですな……」
むにょむにょとそれなりに可愛げのある寝顔で、とんでもない爆弾を落とす。
「よもや何も知らぬ異邦人にまで手を出すなど……」
「出してないワヨ!」
オムリクの誤解を何とか晴らした後にシャリベルはやっと、自分を苦しめていたあの囁き声がしない事に気付いた。
そして、別にそういう仲なんだと広めても別に問題は無かったなと、シャリベルは少しだけそう思った。
2024/09/02
どうして書いたのか全く覚えていない。ただ事件屋クエストは好きだし、シャリベルも好きだったので書いたのだと思う。
なので、暁月のMWでの事件屋クエスト前提であんなに不満が出るとは思っていなくて驚いた。
