令和エアペーパー - 2/2

 3305年9月2日、宇宙標準時午前10時40分。
 ヘンリックとガスコインは停泊させた宇宙船、“夜明けの船”号にて荷物と対峙していた。
「Zorgon Peterson社から、Adderオーナー様にプレゼント……だそうだ」
 ヘンリックが目の前の古式ゆかしき段ボール箱を開けると、丸くマスコット調にディフォルメされたAdderのぬいぐるみが出て来た。
 段ボールには他にもバリエーション違いのAdderぬいぐるみが入っている。
 ライト付きヘルメットを被ってツルハシを担いでいる、古典的な採掘師の格好をした物、レーザーピストル(光学武装という事だろう)を構えている物。
 絆創膏が貼られている物はベソをかいているし、クローム塗装バージョンのAdderはエッヘンと胸を張り、誇らしげな表情をしている。
「へぇ、可愛いモンだな。これ全部Adderか?」
 段ボール箱の中からぬいぐるみを取り出し、横一列に整列させながらガスコインが言う。
「どうやらそうらしい。“Adder-Kun plush”(Adder君ぬいぐるみ)とタグに書いてある」
 言いながら、ヘンリックは行儀良く座っているAdder君ぬいぐるみを手に座らせて眺める。
自分達が普段乗り回している“夜明けの船”号と同型だとは思えないほどの可愛らしさと丸っこさだ。
丁度すっぽり抱えられる大きさなのも良い。子どもからすれば少し大きいが、だからこそ宇宙船に見えるだろう。
普段乗っているからか感覚麻痺しがちだが、宇宙船は基本的に大きい物だ。例え小型船でもその全長は20mを下らない。
故に、手に余るぐらいがより“らしい”のだ。
「よく出来てるな。特徴を巧く捉えているし……腹のポケットはカーゴハッチか」
ポケットと言ってもAdder君に付いている物はヘンリックの指先が入る程度で、ほぼ装飾に近い。
子どもはこの小さな隙間に、これまた小さな宝物を入れるような遊びが好きだ。
子どもから大人まで魅了するであろう素晴らしい出来に、既に一般市場に出回っていてもおかしくないだろうとヘンリックは思ったが、タグには“非売品”の文字がある。
「うーん、手触りも悪くないな……フカフカだ。これがもしステーションで売ってたら、娘への土産にするだろうな」
「ああ。だが、非売品らしい」
「そうか……残念だな」
包帯越しに並べたAdder君ぬいぐるみを見つめるガスコインに、ヘンリックは適当に二つぬいぐるみを取って手渡した。
「だが……こんなにあっても飾る所がない。この二隻にはお嬢ちゃんの護衛をさせてやってくれ」
手渡した一隻は手練れなのか十字傷が特徴で、腕を組んで睨みを効かせている。
もう一隻の方は両手(翼の部分だ)を広げ、ハグを求めているか抱き着いている最中に見える。表情も優し気だ。
「いいのか、ヘンリック」
「勿論。お前をいつも連れ出している事へのお詫びだ。さて、残りの連中の居場所を考えてやらないとな……」
採掘師の格好をしたAdder君を小脇に抱え、どこがいいかと呟きながらヘンリックは艦橋から出て行った。
「へへへ……」
ぬいぐるみを見た愛娘がいつにも増して喜ぶ顔が目に浮かぶ。ガスコインは渡されたAdder君を持って、ヘンリックの後を追った。

後日。ガスコインの娘の手によって、それぞれ黒くつばの広い帽子と黄色い三角帽子を被せられた二隻のAdder君ぬいぐるみを見た二人は、嬉しさと恥ずかしさが入り混じり、その日は一日中挙動不審だったと言う。

 

某SFMMOのパロディでした。
日本語はないのですが、今でもサービス稼働中なので興味のある方はGoogle先生に聞いてみるといいかも。

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